うぇるそふぃあ ~35歳リーマンの生活収支改善ブログ~

某IT会社で勤める35歳の企画系ヌルリーマンの日常。日々が退屈で、面白いことを失ってしまった僕に「楽しさ」と「驚き」を。自分がテクノロジーやガジェットが好きなのでそれ系の記事が多めになると思います。

戦略スタッフの1年目に理解しないといけないこと(読書ログ:「新しい戦略の教科書」)

経営戦略を考えるときに、「理路整然としたシナリオを超人的に頭のいい人が作り上げ、幹部がみなで実行に移す」というイメージでいると大きく異なる。
本書は、経営戦略は現場に近い各分野の専門家がボトムアップ的な在り方で積極的に関わっていくべきものというスタンスで書かれ、実行に重きを置いた戦略の解説書となっている。

特に、戦略の意義は大きく二つあり、地図的な機能(1.現在地を示す 2.ありたい姿を示す 3.そのために何をするべきかを示す)と社内のコミュニケーションを活性化する機能を挙げている。

理論ではあまり意識されない一方で、実務ではこの「コミュニケーションの活性化」という部分が非常に重要と感じる。例えば、目指す姿一つとっても、幹部(大企業の場合幹部だけでも数百人規模)でバラバラ、さらに課題の優先順位は政治的な思惑もありさらにバラバラ。というのが実態である。

また、現在地についても、固まった評価はなく、戦略を作る過程での棚卸が必要である。例えば、ある事業では競合優位、ある事業では劣位。営業部門は自社の製品力の弱さを嘆く一方で、製造部門は営業力の弱さを嘆くなど、あいまいな状態の中で、自社のポジションをしっかりと分析して、定義づけ共通認識にすることが求められている。

 

本書では、前半はオーソドックスな経営分析(5forceやバリューチェーンブルーオーシャン)やインタビューの手法など「分析」の基本に触れている。

 

一方で、後半では「実行」に落とし込むための手法に焦点が合っており、前述した多くの人を巻き込みながらトップが戦略を策定すること(特に聞く姿勢を持って接しつつ、最終的には民主主義的ではなく、トップのコミットを持って戦略策定する)、実行に向けたムード作り、社内政治を攻略することなどが紹介される。

 

例えば、実行に向けたムード作りでは、「クイックウィン」という最初に戦略の成果を示すための項目を設定し、そこで成果をあげることで全社への波及を狙うこと、スケジュール管理ではコミットスケジュールと実行のスケジュールを分け、うまく進んでいる感を演出することが紹介されていた。

また、社内政治は反対勢力が団結することを防ぐため「彼ら」という派閥感のある扱いを避け、「彼/彼女」の有力者を一人ずつ切り崩す。もしくは逆に現場レベルの有力者を先に切り崩し、戦略を実行させるなどの切り崩しと、成果をうまく反対勢力に渡すことで抱き込む手法が紹介されていた。

そして、戦略の実行のためには「危機感」と「希望」のバランスとストレッチされた管理可能な目標数値が重要であること。戦略を実行しながら具体化を図っていく、つまり最初はあいまいなキーワードが現場に落ち、実行されていく中で戦略大綱がまとまるということが重要ということが記載されていた。

戦略スタッフがイメージと現実のギャップに悩む前に、戦略の役割や実行論を学ぶために非常に有益であると感じた。