組織文化と校風について考えたこと
『Who You Are』の書評です。
本書は、組織文化についていくつもの歴史的な事例を引きながら、「組織文化」という得体のしれないものの築き方、変え方について語っている。
組織文化・・・、構成員の間で共有されている行動原理や思考様式などのことを言う
事例として紹介されているものは、ハイチの革命を成し遂げたトゥーサン=ルーベルチュール、日本の「武士道」、監獄をまとめ上げたギャングの首領シャカ=サンゴール、モンゴルのチンギス=ハンの事例である。
事例の合間合間に、著者が関わっている企業(SlackやHP、Google、Uber)の事例が紹介され、組織文化のパワーとそれが暴走、変質してしまうことによって生じる弊害などが描かれている。
例えば、負けずぎらいな企業文化が、失敗を許さず不正や社会的にフェアでないやり方を正当化する形に変質してしまう。「共感」の企業文化が、かえって構成員の間での率直なフィードバックを阻害してしまう(なんか評価のつかない日本企業っぽいですね。)など。
書籍を通じて記載される組織文化の築き方は以下。
- 文化のデザイン、文化の刷り込み
- 構成員がハッと振り返るようなショッキングなルールや物語を作る
- 倫理規範を明確にし、明文化する
- 信賞必罰(特に見せしめも必要)
- 何が大切かを行動で示し続ける
自分が関わってきた中で、一番組織文化が明確だったのは高校で、まず明文化された文化があった。
シンプルに校風が校章や学校名になっていた。
そして、物語も明確で、おそらく伝統あるタイプの学校はみんなそうなんじゃないかと思うが、学校の由来や黎明期の有名人など校風を作り上げ、体現するストーリーは折に触れて、何度も繰り返し語られる環境にあった。
そして、その次の倫理規範も、思想的な背景として暗黙的に存在するものと、さらにそれが明文化したものの2つがあり、それを守ることが「カッコいい」と思われるだけの雰囲気があったように思う。
さらに、「伝統再生産」のための学校行事や部活が複数あり、先輩から後輩へ脈々と受け継がれる再生産装置がワークしていた。
この辺のシステムが実は強力にワークしているので、今なお慶応と早稲田の「雰囲気」の違いや開成と麻布の校風の違いといったものが生まれるのかなぁ・・・などと考えた。