なぜ一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?~実践版「レジリエンストレーニング」~
仕事を始めて、いろいろとプレッシャーを受けながらも働いて、ある時、本気でこれ以上エンジンがかからない「心を病んだ」状態になってしまう前に、その対策として読むための本。
なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか? 実践版「レジリエンス・トレーニング」
- 作者: 久世浩司
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2014/10/31
- メディア: 単行本
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社会人になったら元気なうちに読んでおくと本当に役に立つ。
「レジリエンス」というキーワード自体は新しいものだが、軽度のうつ病を治療されるために使われる認知療法的なメソッドだったり、あるいはセロトニンを分泌させるための運動療法だったりが紹介されている。
特に、この本ではうまくレジリエンスを持って仕事に取り組めている人が具体的に何をやっているのか?何を感じてしまうのかを事例として紹介しているが、中身の内容自体は序章に書かれており、とても読みやすい。
以下の通りの7つの技術と小項目がエッセンス
技術1:ネガティブ連鎖を断ち切るための習慣を作る
⇒ネガティブな感情を断ち切るには以下の4つの習慣が有効
①エクササイズやダンスなどの運動系
②音楽の演奏
③ヨガや冥想などの呼吸を整えること
④感情を表出させ、整理する筆記系
+とにかくストレッサーから離れる気晴らしを持つことが有効
技術2:役に立たない思い込みを手なずける
⇒感情をラベリングし、自分の中で意識的に自分の感情をコントロールできるようにする。
(認知療法的なアプローチで、心配症の人は「自分を不安にさせる悪霊」が出たといって、ある程度状況・感情を客観視できるようにする。そのうえで受容・追放を意識的に選択する。)
技術3:やればできるという自己効力感を身につける
⇒①実体験のような形で小さな成功体験を身に着ける。②お手本をベースにして、自分も頑張れるという雰囲気を作る。③他人の励ましでモチベーションを上げる。④ムードで頑張れるだけの環境を作る。
職場の観点で行くと、育成では①実体験としての成功体験を積ませること、②お手本としてメンターやメンターの代わりになるようなストーリーを持たせることが必要
技術4:自分の強みを生かす
技術5:心の支えとなるサポーターを作る
⇒支え、支えられる関係の仲間を意識的に作るあげていくことが必要!!
技術6:感謝のポジティブ感情を高める
⇒感謝とは周りの人に助けられたとき、良い機会に恵まれたときに生まれる。
感謝することで、ストレスが軽減される。関係性への信頼が生まれる。
⇒感謝の習慣を持つ!!
具体的なワークとして、その日3つの良かったことを記録する。
この機会に、他人や環境への感謝を振り返ることができる。
技術7:痛い経験から意味を学ぶ
⇒自省の時間を持つ。レリジエンスは自分自身で鍛えることができ、鍛える努力を積み上げていくことが重要。
いかに周りの人に支えられてきたのか?逆境を乗り越えて何が成長できたのか?自分の中で「教訓化」し、ストーリー化していくことが何よりも重要。
ここまでが、書いた内容のメモです。
このビジネス自己啓発本の分野の中では、タイトルは「意識高い系」に一流の人は~~と書いてありますが、内容は意識低い系というか非常に厳しい環境の中でいっぱいぴっぱいになっている人向けの本です。
『身のたけ起業』個人で稼ぐ時代の生き方マニュアル
この本、タイトルにある通り自分で持っているスキルを活かして起業を進める本です。
起業する際の参入分野はエキスパートと呼ばれる日本では新しく認知され始めた職業。
誰でもできる、いつでもできる、どこでもできる、身のたけ起業 (角川フォレスタ)
- 作者: 井口晃
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2014/08/23
- メディア: 単行本
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よい言い方をすれば、教師でありコンサルタント。もしくは最近ではやや死語になっているアルファブロガーなどのエキスパートと呼ばれる職業が本書で勧められています。
身もふたもない言い方をすれば、最近流行の「情報商材」業界への参入マニュアルです。
全体を通して、ビジネスを起こしていく上での、マインドの持ち方、顧客とのコミュニケーション取り方、ビジネスモデルなど非常によくまとまっています。
別に上で書いたような情報商材だけではなく、他のスモールビジネスも含めてこの本に載っている考え方は応用がきくと思う。
個人的に、この本の最も印象的な内容は、年収1000万円を実現する際の収入例で、
①会員サイト:月額5000円×30人=年間180万円
⓶教材販売:単価30000円×100人=年間300万円
③セミナー:単価50000円×5人×年間12回開催=300万円
④オンサイトの個人コンサル:月額10万円×2名=年間240万円
というパターンを書いており、これだけ見ると非常に狭く、一部の限られた顧客から高く費用を取るモデルを想定している。
正直ここを読んだ段階で、ありえないレベルでぼったくっているように見え、うわーと背筋が冷たくなってしまった。
しかし、この本が次に押しているのは「徹底的な差別化」である。
例えば、まじめなビジネス風のジャンルで行くと「ミャンマーで中小企業(特に物流業)の海外進出を支援」
だったり、いわゆる怪しい情報商材風であれば、「大学1年生まで女性のまともに話したこともない人が、どうすればバイト先で知り合っただけの薄いつながりの彼女と付き合えるのか?」というような「超ニッチだが、ニーズが切実」な市場で圧倒的な地位を築くということが重要だと書いている。
例えば、私自身、中学・高校とずっと男子校で、大学に入るまでは女の人と話をすることもまったくできなかった。大学デビューをしようとしても、女の人と1m未満に近づくとビビってしまうありさまだった。
この深刻な女性恐怖症をあの手この手で乗り越えてきたわけだが、こういうニッチで切実な経験やノウハウを「適切な市場に、適切に伝えていけば儲かる」と教えている。
(別に大した努力はしていないので、聞かれれば教えるくらいの内容ですが・・・。この本での教えでは、このニッチで切実な悩みを抱えている人にとって、このソリューションは値段がつけられないほどの価値なので、売れる!ということです。
たしかに、当時女性恐怖症が2万円と言われたら払っていたかもしれない・・・)
さらに、ポジショニングの取り方も上の例で行くと、「女性恐怖症改善」の専門家として1000人くらいにアピールするよりも、「大学デビューでの女性恐怖症改善!」みたいに、1000人のうちの50人くらいに強力に響くほうがいいと書いている。
この差別化のやり方や上手にお客様にアピールをしていくコミュニケーションの取り方も別にこのエキスパートに限らず応用可能です。
特に、この人の提唱する世界観も、『ワークシフト』(リンダ=グラットン)や『フリーエージェント社会の到来』(ダニエル=ピンク)等とも似ており、個人で稼ぐ能力が今後重要になっていきますよと書いていて、興味深いです。
フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方
- 作者: ダニエル・ピンク,序文:玄田有史,池村千秋
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/08/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: ハードカバー
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映画ログ:マイレージ、マイライフ
映画の中には、10分観ただけで名作だと分かるものがあると思う。
この「マイレージ、マイライフ」もそのタイプの映画の一つである。
この映画の主人公ライアンは仕事に生きるタイプ。そしてプライベートは「バックパックに入りきらないものは持ち歩かない」という主義。
ワンルームの部屋、私服のないクローゼット、おそらく相当な給料をもらっているであろうが、彼にはプライベートで何かを示すものはない。
出張で忙しく飛び回り、目標は1000万マイルを貯めること。
仕事は「解雇人」であり、人からは恨まれ感謝はされない仕事である・・・
この映画を26歳で見て思うこと、30歳で思うこと、40歳、50歳・・・と永遠について回るんだろうと思う。
昔、大学を卒業するときに、「明日からブラジルへ赴任だ」と言われて、赴任できるフットワークと度胸を持っていたいと思っていた。
ただ、それはもしかしたら、度胸ではなくて自分の中のバックパックが単に空虚であるということだけなのではないだろうか?
例えば、結婚をして家族を持つ。例えば、友人と過ごす。そういうしがらみや荷物、あるいは絆といったものを、捨ててバックパックを捨てて、マイルだけが生きがいになるとしたら、それはもしかしたらむなしいのではないだろうか?
今も海外赴任には憧れるものはあるけれど、その結果得られるものが、もしもマイルだけなのだとしたら?バックパックを軽くするのではなくて、その中に多くのものを入れ続ける方が素敵な人生なのでは?
会社で働く上での生き方を何十回でも考えさせてくれる映画でした。
死亡フラグのへし折り方の考察
久しぶりに純粋に面白い小説を読んだ。
「頭を使って読んだらいけないミステリー」というジャンルは新しいのではないか?
例えば、山田悠介さんの小説が「設定は複雑で超面白いのに、表現力・展開力が惜しい」作品だとしたら、下の二冊はこの真逆で「設定はまじか・・・(驚)というくらい残念なのに、表現力と話をどんどん広げていく超絶展開力で読者を飽きさせない」作品です。
疲れたとき、頭を使いたくないときにお勧めです。
死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 5-1)
- 作者: 七尾与史
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/07/06
- メディア: 文庫
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映画ログ2:『The Master』
今回観た映画は『The Master』。
実在する宗教「サイエントロジー」がモデルになっており、華々しく経済を発展させて行く裏で、例えば戦争(第二次世界大戦)の爪痕であったり、あるいはアルコール依存であったり、社会問題や矛盾を抱えるアメリカという国を描いている。
話の主軸になっているのは、二人の男性。
この映画の架空の教団「The Cove」の教祖ランカスター(フィリップ=シーモア=ホフマン)と彼に心酔する教団の構成員フレディ(ホアキン=フェニックス)。
この映画の主題はズバリ、「自分の人生の主(Master)は誰なのか?」「自分一人で自分の全てをコントロールをすることは可能なのか?」ということなのだと思う。
この映画の登場人物は、みな悩みを抱えており、教団員の集いの場面は、ひたすら退廃的であるいは寄り添い合うようにできている。
例えば、ランカスターの家であたかも家族的に行われるパーティであれ、あるいは船の上で「教団メンバーは同じ船の構成員である」ということを示す結婚式などそういう相互依存的な要素を強く感じた。
それは教団のリーダーであり、父でもあるランカスターも同様で、彼は妻へ依存し、ある意味で支配を受けながら生きている。また、教祖としてのしがらみに囚われ、自分の怒りや憎しみといった感情を押し殺しながら生きている。
一方で、物語中で「獣」と称され、教団に批判的なものを暴力で打ち倒すような性格のフレディもまた、何かから逃げ、何かに依存しながら生きている。
物語の終盤で、フレディは教団を離れ、「自分の人生のMaster」として独り立ちをし、友としてランカスターと再会を果たす。
しかし、それでもやはり完全な自立は果たせていないのではないか・・・というシーンで終わる。
映画を見るというよりは、「読む」という表現の方がしっくりとくるような映画でした。純文学的な、控えめな自己主張の中で、非常に重たい主題を扱っています。
何かに悩んでいる人にお勧めです。
映画ログ1: ドッジボール
ドッジボールを題材にしたコメディ映画。
小学生ならだれもがプレイしたことのあるドッジボール・・・とは何かが違い、6 vs 6でボールが5個というなんとも日本人には不思議なルール。
コメディが見たくてしょうがなかったので、借りてみたもののちょっと期待外れ。
しかし、これが一時期の全米No1って・・・アメリカ人のセンスは率直によくわからんです。
そういえば、ドッジボールというところで行くと日本も全然負けてなくて、小学生全国大会なんてものまである。(実は私も東海大会まで昔出ていたりする。)
チーム名が子供の心をくすぐる感じでカッコいいのと、意外と競技が盛り上がるのが特徴!!
【2011年】第21回 全日本ドッジボール選手権大会 好プレー集 - YouTube
いや、テンション上がります。
考察 ルポ 電王戦ー人間vsコンピュータの真実
ルポ 電王戦―人間 vs. コンピュータの真実 (NHK出版新書 436)
- 作者: 松本博文
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/06/06
- メディア: 新書
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コンピュータと人間が本気で勝負をしたら、どちらが勝つのか?
2014年の現在無邪気に「人間だ」と答える人はもうほとんどいないのではないかと思う。
この本では、将棋という一つの競技の中での人間の挑戦の歴史が描かれている。
人間vsコンピュータと言ってはいるが、実際はコンピュータを進化させている者も人間であり、何人ものヒーローが時に劇的に、特に漸進的に技術を進歩させていくドラマが熱い。
この本の中ではいくつかのキーイベントが紹介されている。
まず、「機械学習」
人間が将棋を勉強しようと思ったら、とにかく将棋を指す。
過去の棋譜を見ながら「こういう時はこう打つんだ。」ということを勉強する。
何度も繰り返していく中で、なんとなく「いい形」というか、勝つために気を付けないといけないことが暗黙的に出来上がっていく。
昔のコンピュータのプログラムでは、例えば定石だったり、を人間が一つずつ教えこんでいた。また、何が「いい形」なのかを人間が明確に教え、コンピュータはその人間が決めた教科書的なプログラムを元に「計算」していた。
しかし、機械学習のすごいところは人間方式で、過去の棋譜を見たり、たくさんの打ち手の中から何が「いい形」でどう打てばいいのかを学習する。
この結果、ブレイクスルーが一気に進んだ。
そして、「ハードウェアの進歩、クラスタ化などの進歩」
これにより、コンピュータの演算能力が段違いで上がっていく。
どんなプログラミングでもポイントになってくるのが「無駄な計算をどうやって減らすのか」であり、将棋のように計算量がほぼ無限大になって来る場合「いつ無駄な選択肢をあきらめて、可能性のあるものを絞り込むのか?」が重要になる。
将棋の棋士はスマートに必要なものを見抜いていくので圧倒的な深読みができる。
それができないコンピュータは、「演算力にものを言わせてすべての選択肢をつぶす」という方法が、技術進歩と同時にとれるようになっていく。
ハードウェアの進歩、クラスタ化の進歩からこの電王戦では、ある試合では「東京大学の700台のコンピュータをつなげた」ハードウェアやら、もう聞いただけで震えてしまうような構造のコンピュータシステムが出てくる。
最後に、「複数システムの合議体」や「奇策封じ」の手法の進歩。
人間であれコンピュータであれ、「ミスをしないこと」というのは一つの圧倒的な強みである。将棋ソフトの中には、ミスを防ぐことやより優れた手を指すための「複数の将棋ソフトの合議体(=あから2010)」やら、逆に「コンピュータソフトが苦手とする(=ミスを誘発する)手を指す(=やねうら王)」などの手法が現れ始める。
その結果、「ミスをしない」無機質なコンピュータという強みが目立ってくるようになった。
特に、この本の中では、いったんはソフトの悪手とも言えないような手(しいて言うなら、最善手ではないという意味で次善手)をとがめることで、優勢を築き上げた人間が、動揺などすることのないコンピュータに逆転される試合が何度も掲載されている。
また、他にも人間側が「ソフトの癖」をつくような形で勝ち切る棋士もおり、ある意味でコンピュータの「コンピュータらしい限界」が見えていたが、前述のやねうら王などの登場でコンピュータのある場面での極端な弱さというものも今後封じ込められていくのではないだろうか?
この本の凄味は、棋士側だけではなく、コンピュータソフトを開発している側も人間であり、どこまで行っても「人間vs人間」の勝負であるということを感じさせてくれることだと思った。
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(読後感)
なんか、chikirinさんの記事
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130615
を1年前に読んでいて、内容が似てしまった・・・
同じ本を読んだのだから当然といえば、当然なのかなぁ・・・