読書ログ:ニューカルマ~人間を動かすものは何か?~
恐ろしい本と出合ってしまった。。。
※ネタバレ注意であらすじと感想です!
この本はネットワークビジネスをテーマとした小説で、主人公は私とほぼ同じくらいの20代後半。主人公も普通に会社に勤めて、微妙なオジサンの同僚と一緒になんとなく仕事をしている。
昔の大学の同級生から「どうしても来てくれ」とネットワークビジネスの講演会に呼ばれたところから物語は始まる。
最初は半信半疑で、「不景気な中でほんの少し収入の足しになれば」というような縋るような気持ちでネットワークビジネスを始める。
しかし、ある時「身体を売って」優良会員を獲得したことから状況が一変。
収入80万円/月という圧倒的な収入を得る。一方で、ネットワークビジネスへのめり込むうちに、周囲の信頼を失い、地元へは帰ることができなくなり、会社も上司ののいびりにあい退職してしまう。
最終的には、すべての収益を失っているところを親友・家族の助けを得て、一度はネットワークビジネスから足を洗う。
・・・ここまではよくあるドキュメンタリー調の小説である。この小説の底なしの救いのなさはここから始まる。
さて、再就職を果たし、営業として地道に生活を立て直した主人公。
営業先の社長がなんとネットワークビジネスの社長だった
「つらかったな。お前なあんも悪くないよ。ただな、同じような境遇にある人の話、聞いたってくれんかな?」
そうその社長に語りかけられ、結果的には自分自身を完全に騙してネットワークビジネスへのめり込んでしまう。
世の中で、最も恐ろしいものは善意と信念であり、不安を駆動力にしていた、主人公が善意を駆動力に変えた時、何が起こるのか?
印象的なのは、最初は後ろめたさから「自分と関係の薄い人を優先的に勧誘」していた主人公が、物語の最後では真っ先に「縁を切られた親友を勧誘しようとする」(=自分自身が100%善意)でネットワークビジネスをやっているというプロセスである。
この本のタイトルにもなっている「カルマ(=業)」とは、
・お金を稼がないと生きていけないこと
・周囲の成功者をうらやんでしまうこと
・自分の幸せを人に分け与えたいとおもうこと
・自分の善意を人に認められたいとおもうこと
というような、善性も悪徳もすべて含んだ、人間の心そのものなのでは?という気分にさせてくれる小説でした。