「これからの世界を作る仲間たちへ」を読み切り。
この人、4人くらいのパネリストが対談する形式の講演会で、「俺は人間を脱構築したい」 だの「コンピュータが人間を複製するになったら、人間は死んでも自分のコピーが残り続けることを受け入れる」だの不穏なことを一人でしゃべり続けていて、一気にファンになりました。
こういう天才肌なタイプは話すよりも本とかにしてもらった方が、考えていることに追いつきながら理解できてありがたいです。
世界観と洞察は本当に鋭い。
編集がたぶんマイルドになるように加工したと思わせつつ、その深さの片りんに魅せられました。
特に現代を「魔法」(=仕組みや原理は理解できないのにとにかくすごいことが起きる)というキーワードで捉えているのは本当にすごい。
これまでの「アナログvsデジタル」という対立から「デジタルとアナログの融合、デジタル・ネイチャー化」が起こる中で、これからの僕たちの生活はますます魔法的になっていく。その中で、アナログとデジタルの境目がだんだん継ぎ目なく、魔法のように新しい生活を支えていく。
落合氏自身もメディアアーティストとして、「触れる映像」や「音波でものを動かす」などの切り口で、この境目を継ぎ目なくしていくように活動しています。
一方で、これから必要とされる人への洞察も鋭く、
これからの世界=「人間とコンピュータが足りない部分を補いあって、前の人類を越えていく時代」と定義しており、
コンピュータのいいところ:地道。正確。スピード。
人間のいいところ:モチベーション。対人間コミュニケーションインタフェース。機会に比べて汎用的に動ける身体
と考えており、
例えば、ウェアラブルデバイスでコンピュータの指示を受けて作業をするような業務(チケットの対面販売や単純作業など)では、むしろ指示出しの部分が機械化され、「人間はコンピュータの下請けになる」と言っています。
ただし、それも悪い意味だけではなく、ある意味コンピュータの人間のコラボレーションであると説いています。
また、楽しくこの下請けをさせるための「仕組み」もどんどん洗練され、ゲーミフィケーションや賞与の管理などが今後ますます浸透すると説いています。
一方で、社会が「魔法化」していく中で、この仕組みを作り、クリエイティブクラスであり続けるためには、誰でもが知っているわけではない「暗黙知」が何よりも重要であり、アイデアを社会に実装することで、この暗黙知が拡大されていくような活動の仕方をすることが重要。といっています。
この辺のワーディングもまた天才的で「変態」が重要だと言っているのです。
変態とは普通とは異なるところで、何かの興味を突き詰め、研究・探求ができる行動特性のことで、思考体力を培うことでなれるといっています。
結論としてはオーソドックスなのですが、とにかく思想家的なスケール感とエンジニア的な行動目線を自由自在に行き来しているまさに変態的な本でした。