毎年、2月の楽しみ「文化庁メディア芸術祭」
第12回くらいから毎年参加しているのですが、いよいよ今年で第19回ということで、
時がたつのは早いものです・・・。
六本木の新国立美術館で2月14日まで入場無料なので、お時間のある人はぜひ!
さて、今年の展示ですが、一言でまとめると「時代が一周回ってしまって方向性不在」という印象を持ちました。
確実に年を負うごとに洗練されているし、表現のレベルの高いものが集まっているのですが・・・。とんがった作品は少なかった印象です。
7年位前までは「ほーらこれが新技術だぜ。どやぁ」というものが溢れていました。
それが役に立つものなのか?社会的にインパクトがあるのか?なんてお構いなし。
むき出しの才能と可能性の玉手箱という感じでした。
例えばこんなの↓↓
■Is parade(2010年/第14回メディア芸術祭受賞作品/KDDI株式会社)
エンターテインメント部門 | 第14回 2010年 | 文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品
Twitterアカウントで楽しめるジェネレーター。TwitterのIDを登録するとフォロワーがキャラクターになってパレードする。auスマートフォンのプロモーションとして2010年4月30日に公開され、11月15日までに1350万回のパレードを行った。
それが、2011年の東日本大震災もあり、人とのつながりだったり身体性だったり、もっとレトロなもの・情緒的なものを評価していこう。というウェットな雰囲気が高まってきました。
■Sound of Honda(2013年/第14回メディア芸術祭受賞作品/本田技研工業株式会社)
エンターテインメント部門 | 第17回 2013年 | 文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品
この作品は
1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した、世界最速ラップの走行データを用い、彼の走りを音と光でよみがえらせた。エンジンやアクセルの動きを解析し、実際のMP4/5マシンから録音したさまざまな回転数の音色と組み合わせることで、当時のエンジン音を再現。全長5,807mの鈴鹿サーキット上に無数のスピーカーとLEDを設置し、再現した音を走行データに合わせて鳴らすことで、24年前の走りを表現した。
という、要はものすごい技術(と資金)を結集して、昔の走りを再現したという「発想」が受賞しているわけですね。これもすごいけど、メディアを使ってやっていることは「過去の再現」であり、それをさせているのは人の懐古心だったり、「走る楽しさ」への原点回帰への思いだったりするわけです。
さて、前置きが長くなりましたが、2016年今年の芸術祭は、「新技術は、それはそれでありふれている」、「かといって、レトロな新機軸を見つけようとしても、それもありふれている」という中での勝負だったわけです。(私見)
そんな中で、今年目立ったのがまず
「ロボット×人間のコラボ」
ロボットと人間が同じステージに上がったら?一つの作品を作り上げたら?そんなコラボレーションを行ったものが、下の3つ
■Yaskawa×Rhizomatiks×ELEVENPLAY(ロボットと人間のダンスコラボ)
YASKAWA×Rhizomatiks×ELEVENPLAY | 第19回文化庁メディア芸術祭
YASKAWA BUSHIDO PROJECT / industrial robot vs sword master | 第19回文化庁メディア芸術祭
Drawing Operations Unit: Generation 1 | 第19回文化庁メディア芸術祭
ここで挙げたものはどれも「ロボットが人間の特性の一つである身体性を表現する」ということにあります。特に、個人的には、ロボットアームが居合切りをする「Yaskawa Bushido Project」は面白いと思います。
思わず、安川電機の株を衝動買いするくらい面白かったです。
あと目立ったのは、「強い社会的メッセージ性」を持っているもの。
実は個人的には、これが印象的で、数年前まで「メッセージはアート部門、エンタメ部門は面白ければ何でもいい」だったのが、だんだん境界がいい意味で崩れてきています。面白いだけではだめというのはむしろアートにも近づきつつあるということかと。
■(不)可能な子供:朝子とモリガの場合(アート部門)
実在する同性カップルの一部の遺伝情報からできうる子どもの遺伝データをランダムに生成し、それをもとに「家族写真」を制作した作品。現在の科学技術ではまだ同性間の子どもを誕生させることは不可能だが、遺伝データを用いた推測ならば可能である。遺伝子解析サービス「23andMe」から得ることができるカップルの遺伝データをウェブの簡易版シミュレーターへアップロードすると、できうる子どもの遺伝情報が、外見や性格、病気のかかりやすさなどの情報リストになって出力される。
■Black Death(エンターテイメント部門)
テキスト、映像、写真、音声、地図、アニメーションなどさまざまなメディアを用いて、ウェブサイト上でスクロールしながら読む、新しい形式のルポタージュである。
他にも、戦争反対のラップ動画集(あいうえお作文RAPプロジェクト)や原発問題を取ら挙げたものが受賞していました。
そして、最後に
「作り手の圧倒的な情熱を感じさせるもの」
全体としての方向性が不在だからこそ、「自らのやりたいことをやる。やり続ける。」というメッセージに可能性を見出しているのでしょうj。
■正しい数の数え方(エンターテイメント部門 大賞)
本作は、子どもたちのための音楽劇であり、人形劇+演劇+アニメーション+演奏といった複数の表現で構成される、観客参加型の作品である。2015年6月、フランス、パリのデジタル・アートセンター「ラ・ゲーテ・リリック」の委嘱作品として上演された本作は、1900年のパリ万国博覧会が舞台となっている。
この作品の作者は他の地下文化活動も合わせての受賞とのこと。
他にも、大がかりな資金を投入する一方で、ひな形化してきたゲーム産業に一石を投じるような、少人数で開発に取り組み(技術環境の変化からそういう少人数開発も可能に)、情熱と個性的な切り口で勝負したもの(Dark EchoとThumper)が受賞しています。
総じて、無料でいける展示会としては圧倒的におすすめなので、ぜひ行ってみてくださいね。