今回観た映画は『The Master』。
実在する宗教「サイエントロジー」がモデルになっており、華々しく経済を発展させて行く裏で、例えば戦争(第二次世界大戦)の爪痕であったり、あるいはアルコール依存であったり、社会問題や矛盾を抱えるアメリカという国を描いている。
話の主軸になっているのは、二人の男性。
この映画の架空の教団「The Cove」の教祖ランカスター(フィリップ=シーモア=ホフマン)と彼に心酔する教団の構成員フレディ(ホアキン=フェニックス)。
この映画の主題はズバリ、「自分の人生の主(Master)は誰なのか?」「自分一人で自分の全てをコントロールをすることは可能なのか?」ということなのだと思う。
この映画の登場人物は、みな悩みを抱えており、教団員の集いの場面は、ひたすら退廃的であるいは寄り添い合うようにできている。
例えば、ランカスターの家であたかも家族的に行われるパーティであれ、あるいは船の上で「教団メンバーは同じ船の構成員である」ということを示す結婚式などそういう相互依存的な要素を強く感じた。
それは教団のリーダーであり、父でもあるランカスターも同様で、彼は妻へ依存し、ある意味で支配を受けながら生きている。また、教祖としてのしがらみに囚われ、自分の怒りや憎しみといった感情を押し殺しながら生きている。
一方で、物語中で「獣」と称され、教団に批判的なものを暴力で打ち倒すような性格のフレディもまた、何かから逃げ、何かに依存しながら生きている。
物語の終盤で、フレディは教団を離れ、「自分の人生のMaster」として独り立ちをし、友としてランカスターと再会を果たす。
しかし、それでもやはり完全な自立は果たせていないのではないか・・・というシーンで終わる。
映画を見るというよりは、「読む」という表現の方がしっくりとくるような映画でした。純文学的な、控えめな自己主張の中で、非常に重たい主題を扱っています。
何かに悩んでいる人にお勧めです。